格好いい格好いい格好いい!

本当に先輩はかっこよすぎる…!!









「風子ちゃーん!!」

「うわっぷ!ちょっと、いきなり飛びつくなっつの!」

「ごめんごめん、この想いを全身で表現して風子ちゃんにも全身で感じて欲しくて…!」

「はいはい。んで、例のセンパイってやつ?まぁーた」


サイドは長めで短く切られた髪、額に巻かれた鉢巻、白い肌、大きな胸、パンツが見えそうなぐらい短いスカートの丈。彼女の名前は霧沢風子。正義感が強く男勝りな性格だが女の子らしい一面も持ち合わす女の子。そんな彼女にタックルを決めたのは。分け目のない前髪、胸より下まである濃い灰色の髪を右耳の後ろで1つに縛る。癖っ毛なのか毛先はうねっていて、二重の大きな瞳は漆黒。風子同様に白い肌、風子程ないが普通ぐらいにはある胸。スカートも膝上15cmという標準的長さ。華奢な体つきで風子よりも細い。


「またまたその例のセンパイでっす!だってさ、本当にかっこいいんだよ!もう神様の領域だよ、あの美貌は神様が先輩にお授けになったものだ!」

「はいはい、悪いけど。今日の私は暇じゃないんだなぁ」


今だ飛びついたままは風子を見上げる。表面上見れば笑顔でも周囲に漂わせている空気は穏やかではない。は風子からすっと身を引いて離れると先程聞いた話を口にする。


「”花菱烈火が佐古下柳の忍者になった”?」

「そういうこと。じゃ、またねー」


ひらひらと、教室の引き戸を引いて前を向いたまま手をに向かって振る。は「いってらっさーい」とのんびりとした口調で風子は背を向けているので見えないだろうが手を振り返す。風子が出て行った教室はえらく静かなもので廊下の少し離れた所辺りから風子を心酔する腐乱犬と呼ばれる男子生徒の悲鳴が聞こえてきた。大方風子の憂さ晴らしの被害にでもあったのだろう。は自身の席である窓側の1番後ろの席に腰掛けると机に肘を突いて頬杖をし窓の外を眺める。今日も快晴。降水確率0%、多分。


「いい天気だねー…こういう日に先輩とお話でも出来たらはっぴーでぃず確定なんだけどなあ」


はふとグラウンドの方へと視線を落とす。何処かへ移動中なのかグラウンドの端を一人で歩く先輩の姿を見つけた。男にしては長い髪、日焼けというものを知らないような色白の肌に恐ろしい程整った顔つき。


「水鏡先輩、今日も素敵ですっ」


うっとりと、は本日も輝いて見える水鏡凍季也を眺めていた。



















「風子ちゃーん。風子ちゃん何処っすかー」


時間はあっという間に過ぎて放課後。本日も想いを寄せる水鏡をじっくりと眺めることが出来たは満足しきっていた。校舎内をぶらぶらと指定の鞄を持ちながら歩き回る。家が近いこともあってかはいつも風子と下校している。登校は別でも下校は一緒、これは暗黙のルール。わざわざ口に出して言う必要もない程に日常化したこと。しかし肝心な風子が今日は見当たらない、昼休みに教室を出て行ったきり帰ってこなかったのだ。


「あ、風子ちゃん発見!帰ろー」

…、今日は先に帰っててくれる?私用事あるんだ」

「?りょーかい、また明日ねー!」


額や頬に汗を滲ませて風子は校舎裏に佇んでいた。風子に違和感を感じたがいつも通りの口調に安心してしまったらしい、はすんなり頷いて風子に手を振り踵を返す。途中、黒いワンピースの様なものを着た美人なのだが不気味さを漂わせる女性とすれ違う。ぺこりとはお辞儀だけするとぱたぱたと小走りで帰って行った。残された女性はその徐々に小さくなっていく背中をじっと見たまま静かに呟く。


「あの子―――…」



















それから3日間。風子は学校に顔を出すことはなかった。もちろんはその理由を知らない。





















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